第二種電気工事士(通称:電工2種)は、一般住宅・店舗・小規模ビル内の600V以下の電気工事を行うことができる国家資格です。経済産業省が認定する公的な「電気を扱える証明書」で、ビルメン業界・電気工事業界・建設業界で「持ってないと話にならない」と言われる最重要資格です。
なぜそこまで重視されるのか。理由は単純で、無資格者が電気工事をすると違法になるからです。電気工事士法という法律で、「電気工事士の免状を持たない者は、自家用電気工作物および一般用電気工作物の工事をしてはならない」と定められています。
— 配電盤・コンセント・照明器具。「電気を触れる」ことの公的な証明書、それが電工2種です。
具体的にできるようになること
- 住宅・店舗・ビル内のコンセント、スイッチ、照明器具の取り付け・交換
- 分電盤の配線・回路工事
- エアコンの電源工事・室外機の設置工事
- 太陽光発電パネルの配線工事(一定規模以下)
- EV充電設備の設置工事
- ビル管理現場での日常的な電気保全・修理
「上位資格」との関係
電気工事士の資格は、第二種と第一種の2段階があります。
- 第二種電気工事士:600V以下の一般用電気工作物(住宅・店舗・小規模ビル)
- 第一種電気工事士:500kW未満の自家用電気工作物(大規模ビル・工場)も可
第一種を直接受験することも可能ですが、「まず第二種で実技を経験し、現場で2〜3年の実務経験を積んでから第一種に挑戦」するのが王道ルート。多くのビルメン・電気工事士がこの順番で取得しています。
なぜ今、電工2種なのか
AI時代に「物理的な現場仕事」の価値が再評価されています。プログラマーの仕事の一部はAIが代替できても、配電盤を開いて電圧を測定し、不具合の原因を判断する作業は、AIには代替できません。電気は「物理的に触れる人」がいないと動かないのです。
さらに、再生可能エネルギーの普及(太陽光・蓄電池・EV充電)、データセンターの増設、老朽化ビルのメンテナンス需要。これらすべてが「電気工事士」の需要を押し上げています。2030年までに電気工事士は10万人不足すると業界では言われており、向こう10年は「絶対に食いっぱぐれない」資格の代表格です。
第二種電気工事士の試験は、「学科試験」と「技能試験」の2段階で構成されています。学科試験に合格しないと技能試験を受験できません。
受験資格と試験日程
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受験資格 | 年齢・学歴・国籍を問わず誰でも受験可能 |
| 試験回数 | 年2回(上期:5〜7月/下期:10〜12月) |
| 申込期間 | 各試験回の約3〜4ヶ月前から1ヶ月間 |
| 受験料 | 9,300円(CBT方式は9,600円) |
| 試験会場 | 全国47都道府県の試験会場 |
| 申込方法 | 電気技術者試験センター公式サイトからインターネット申込 |
試験は「上期・下期」のどちらか1回を選択できます。上期で学科に落ちても、下期に再挑戦すれば1年で合格を狙えるのがメリット。学習開始時期に合わせて柔軟に組めます。
学科試験の内容
学科試験はマークシート方式・50問(4択)・120分。出題範囲は7分野です。
- 電気の基礎理論(オームの法則・電力・電気抵抗など)
- 配電理論および配線設計(電線の太さ・許容電流など)
- 電気機器・配線器具・電気工事用の材料と工具
- 電気工事の施工方法(接地・配線・取付方法)
- 一般用電気工作物の検査方法(測定器の使い方)
- 配線図(最大10問・記号と工事方法の組み合わせ)
- 保安に関する法令(電気事業法・電気工事士法)
合格基準は60点(30問正解)以上。1問2点で、50問中30問正解できれば合格です。「8割取れば余裕、6割取れれば合格」と覚えておけば、戦略が立てやすいです。
技能試験の内容
技能試験は実技試験・40分。実際に電線を切り、リングスリーブで接続し、コンセントやスイッチを取り付ける「配線工事」を制限時間内に完成させます。
最大の特徴は、「事前に13問の候補問題が公表される」こと。試験本番では、この13問の中から1問だけ出題されます。つまり、13問すべてを練習すれば、本番で初見の問題は出ないのです。これは独学者にとって圧倒的に有利な条件です。
採点基準(一発不合格になる「欠陥」)
- 未完成(時間内に終わらない)
- 配線間違い(回路図と違う配線)
- 結線部分の欠陥(リングスリーブの圧着不良・芯線の露出過大など)
- 器具の取付不良(コンセント・スイッチの結線ミス)
合格基準は「欠陥が1つもないこと」。減点方式ではなく、欠陥1つで即不合格となるシビアな試験です。逆に言えば、欠陥を作らないことに集中すれば合格できます。
2回チャンスの落とし穴
学科試験に合格すれば、その年の技能試験は2回受験できる制度があります(同年度内であれば)。さらに、学科免除制度を使えば、翌年度の学科試験を免除されます。「1年で2回、技能のチャンスがある」と覚えておくと、心理的にとても楽になります。
1. 転職市場で「即戦力」と見なされる
電工2種を持っていると、ビルメン・電気工事・建設業界の「未経験歓迎」求人でも、書類選考が一気に通りやすくなります。「電工2種+未経験=歓迎」が業界の常識です。
完全未経験でも、電工2種+運転免許があれば、年収320〜400万円台の求人に応募できます。さらに、ビルメン4点セット(電工2種・乙4・ボイラー2級・冷凍3種)を揃えると、転職市場での評価は段違いに上がります。
2. 資格手当が月3,000〜10,000円つく
ビルメン業界・電気工事業界では、電工2種保有者に毎月の資格手当を支給する会社が大多数です。相場は月3,000〜10,000円。年間で3.6〜12万円の収入増です。1年で受験料9,300円の元はラクに取れます。
第一種電気工事士になれば、さらに月5,000〜15,000円が上乗せ。資格手当だけで年収が30〜50万円違う、というのは電気業界では当たり前の話です。
3. 一生使える「終身免許」
電気工事士免状は終身有効。一度取れば、更新講習も再試験も不要で、生涯使い続けられます。30歳で取った人も、50歳で取った人も、退職後の70歳になっても、「電気工事士です」と名乗れます。定年後の再就職・地域貢献にも使える、まさに「一生もの」の資格です。
4. DIYで家のメンテナンスができる
自宅のコンセント増設、照明器具の取り替え、エアコンの電源工事。これらは無資格者がやると違法ですが、電工2種を持っていれば自分でできるようになります。電気屋さんに頼むと1工事あたり数千〜数万円かかる作業を、自分で完結できる。家計レベルでも、十分元が取れる資格です。
5. 再エネ・EV時代の「成長業界」に乗れる
太陽光発電パネル、蓄電池、EV充電設備。これらの設置工事はすべて電気工事士の独占業務です。カーボンニュートラル時代の「インフラ」を作る現場で、電工2種は最も活躍する資格になります。
特に、住宅・店舗向けのEV充電器設置は2030年までに国内需要が10倍になると経済産業省が予測しています。今この瞬間に電工2種を取れば、確実に成長分野の波に乗れます。
ここからは、編集部が実際に独学合格した「6ヶ月モデル」をベースに、最も効率的な学習プランを紹介します。社会人が仕事をしながら、平日30分・週末1〜2時間のペースで進める想定です。
1〜2ヶ月目:基礎理論の土台作り
最初の2ヶ月は、電気の基礎理論と配線図の読み方に集中します。オームの法則、電力計算、配線記号の意味。文系出身者にとって最初の壁ですが、中学レベルの数学で十分解けます。
- 第1週:オームの法則・電力・電気抵抗の基礎
- 第2週:交流回路の基礎・三相交流
- 第3〜4週:配線理論・電線の太さ・許容電流
- 第5〜6週:配線図記号の暗記(合格の鍵)
- 第7〜8週:法規・電気工事士法・電気事業法
ポイント:配線図の記号は「丸暗記」が王道。毎日10分の暗記タイムを設けると、3週間でほぼ全部覚えられます。スマホアプリで通勤中に復習するのが効率的です。
3〜4ヶ月目:過去問演習で得点力アップ
基礎が固まったら、ひたすら過去問を解きます。電工2種の学科試験は「過去問の使い回し」が非常に多いのが特徴。過去10年分の問題を3周すれば、合格点(30/50問)は確実に取れます。
- 第9〜10週:過去問5年分(1周目)→ 解説をじっくり読む
- 第11〜12週:過去問5年分(2周目)→ 間違えた問題を中心に
- 第13〜14週:過去問10年分(3周目)→ 通しでスピード重視
- 第15〜16週:苦手分野の再復習・本番形式の模擬試験
5ヶ月目:学科試験本番→技能対策スタート
学科試験本番が来ます。「30問正解で合格」を意識して、解ける問題から確実に取りましょう。試験時間は120分と長いので、見直し時間も十分にあります。
自己採点で60点以上なら、すぐに技能試験対策に移行します。技能試験まで約2ヶ月。13問の候補問題を1〜2問ずつ毎週練習するペースが理想です。
6ヶ月目:技能練習を集中的に
技能試験は「習うより慣れろ」。何度も手を動かして体に染み込ませることが合格の鍵です。
- 第1週:器具・工具の使い方を確認(ペンチ・ワイヤストリッパー・電工ナイフ)
- 第2週:候補問題No.1〜3を1回ずつ作成
- 第3週:候補問題No.4〜7を1回ずつ作成
- 第4週:候補問題No.8〜13を1回ずつ作成
- 第5週:苦手な問題を再度作成・タイム計測
- 第6週:全問を本番想定(40分以内)でリハーサル
- 第7〜8週:欠陥チェック・本番
つまずく人のあるあるパターン
- 配線図記号で挫折:暗記を後回しにすると、過去問演習で時間がかかる。最初の1ヶ月で覚えきるのが鉄則。
- 計算問題が苦手:オームの法則・電力計算はパターン暗記でOK。中学数学が苦手でも、解法を覚えれば解ける。
- 技能練習を後回し:学科合格後に技能を始めると、2ヶ月では足りない。学科合格を待たずに、5ヶ月目から並行するのが安全策。
- 練習材料の使い回し:技能練習で使った電線は1回で短くなるので、最低でも2セット分の電線を用意しておく。
独学派におすすめのテキスト
定番中の定番は、「ぜんぶ絵で見て覚える」シリーズ(オーム社)と「すい〜っと合格」シリーズ(ツールボックス)です。
- ぜんぶ絵で見て覚える 第二種電気工事士 筆記試験すい〜っと合格(藤瀧和弘 著):図解が豊富で、初学者の理解度が圧倒的に高い。学科対策の最強テキスト。
- 第二種電気工事士 筆記試験 すい〜っと合格 赤のドリル:上記テキストの演習問題集。セットで揃えると効果的。
- 第二種電気工事士 技能試験 すい〜っと合格:技能試験の候補問題13問すべてを写真付きで解説。技能練習の必携。
合計予算:テキスト3冊で約5,000円。これに加えて、技能練習用の器具セット(約12,000円)+電線セット(約8,000円)で、独学トータル約25,000円〜30,000円です。
通信講座派におすすめの3社比較
「独学だと挫折しそう」「効率重視で短期合格したい」人は、通信講座を活用しましょう。電工2種に強い大手3社を比較しました。
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独学 vs 通信、どっちが正解?
結論:「自分のタイプで選ぶ」のが正解です。下の基準で判断してください。
| こんな人 | おすすめ |
|---|---|
| 時間に余裕がある/独学経験あり/予算重視 | 独学(テキスト+過去問) |
| 仕事しながら/短期で確実に取りたい/添削が欲しい | 通信講座(ユーキャン・たのまな) |
| スマホで隙間時間に学びたい/価格重視 | スタディング |
| 技能試験が不安/手取り足取り教えてほしい | 通学講習(日本電気工事士協会など) |
「働きながら電気工事士を技術系の通信教育で学びたい」方には、技術系の通信教育講座ならJTEXもチェック。43年の実績・利用企業6,000社・受講者200万人超の技術系特化スクール(PR)。
52歳・元営業職/独学6ヶ月で合格
「電気は学生時代の物理で挫折した文系出身。50代で『定年後も働きたい』と思い立ち、電工2種を独学で取りました。最初の1ヶ月は配線図記号がさっぱりで、本当に心が折れそうでした。」
「でも、3ヶ月目に過去問を1冊解き切った瞬間、急に景色が変わったんです。『あ、これパターンで覚えるやつだ』と気付いてから、勉強が一気に進みました。技能試験は2ヶ月で全候補問題を5回ずつ練習。本番は緊張で手が震えましたが、欠陥なしで完成。合格通知が届いた瞬間、家族にすぐ電話しました。」
「今はビル管理会社で電気保全の仕事をしています。50代未経験でも、電工2種があれば『現場の戦力』として迎えてもらえる。やってよかったと心から思える資格です。」
28歳・元事務職/通信講座(ユーキャン)で3ヶ月合格
「事務職で『手に職をつけたい』と思い、ユーキャンの電工2種講座を申し込みました。受講料は63,000円。最初は『高いかな』と思いましたが、紙テキスト+添削+技能練習器具セットが全部入っていて、結果的に独学より早く・確実に合格できました。」
「私が良かったと思うのは、技能試験の練習動画。テキストだと『どう手を動かすか』が分かりにくいんですが、動画で見ながら同じ手順で練習できると、本当にスムーズに身につきました。本番はNo.6が出題されて、35分で完成。合格できました。」
「今は電気工事会社の現場補助で働きながら、第一種電気工事士に向けて勉強中です。電工2種を取ったことで、人生が大きく動きました。」
40歳・現役ビルメン/技能試験で2回挑戦
「ビル管理会社に勤めて10年。会社から『電工2種を取れ』と言われ続けてきましたが、技能試験で2回連続不合格でした。原因は『リングスリーブの圧着不良』。本人は完璧に出来てるつもりが、欠陥判定だったんです。」
「3回目の挑戦で、たのまなの技能DVDをじっくり見直しました。プロの手元を100倍速で見て、自分のクセを直して。『圧着は1回で確実に』を体に染み込ませて、3回目で合格できました。」
「電工2種は、学科よりも技能でつまずく人が多い。欠陥1つで即不合格のシビアさを舐めていました。これから受ける人は、技能練習を5周以上やってください。それが合格への近道です。」
主な就職先・年収レンジ
| 業界 | 仕事内容 | 想定年収 |
|---|---|---|
| ビル管理会社 | オフィス・商業ビルの電気保全・設備管理 | 350〜500万 |
| 電気工事会社 | 住宅・店舗・小規模ビルの新築・改修工事 | 380〜520万 |
| 太陽光発電・蓄電池施工 | 住宅・産業用の太陽光・蓄電池工事 | 400〜550万 |
| EV充電設備施工 | マンション・商業施設のEV充電器設置 | 400〜600万 |
| 病院・ホテルビルメン | 24時間体制の電気保全(手当多め) | 400〜600万 |
| 独立電気工事士 | 個人事業として小規模工事を請負 | 500〜1,000万 |
キャリアアップの王道ルート
- 1年目:電工2種+実務経験スタート(ビルメン会社・電工会社)
- 2〜3年目:危険物乙4・2級ボイラー・3冷凍機械を追加取得(ビルメン4点セット完成)
- 4〜5年目:第一種電気工事士・消防設備士甲種4類にチャレンジ
- 6〜10年目:ビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)でマネジメント職へ
- 10年目以降:独立開業 or 設備管理マネージャーへ
このルートで進めば、10年で年収300万→600〜700万円のキャリアアップが現実的に見えます。電工2種は、その「最初の1歩」です。
独立も視野に入る
電気工事士は、「個人事業として独立できる数少ない技能系国家資格」です。一定の実務経験(一般的に5年以上)を積めば、自分で電気工事業の登録を行い、小規模工事を請け負えるようになります。
特に、住宅向けのコンセント増設・照明工事・エアコン工事は「個人の電工さん」への需要が根強くあります。地域密着型で営業すれば、年収700万〜1,000万円も視野に入ります。50代で独立して定年なしで働く人も、業界には多くいます。
取れます。電工2種の合格者の半分以上は文系出身と言われています。中学レベルの数学(オームの法則)と記号の暗記ができれば、誰でも合格圏内です。
間に合います。50代・60代の合格者も多く、「定年後の再就職」を目指して取得する人が増えています。電気工事士免状は終身有効なので、何歳でも取って損はありません。
残念ながら、学科だけでは免状は交付されません。ただし、学科合格者は翌年度の学科試験が免除されるので、翌年に技能だけ受験することができます。「学科だけ取って、技能は翌年」という戦略も有効です。
学科60%、技能65%なので、単純計算で一発合格は約40%です。ただし、しっかり対策すれば70〜80%まで上げられます。重要なのは「学科で油断しない」「技能を最低5周練習する」の2点です。
Amazon・楽天で「電気工事士技能試験 練習セット」を検索すれば、器具+電線フルセットが15,000〜25,000円で揃います。HOZAN・ジェフコム・モズシリーズが定番。電線は1セットで全候補問題1周分なので、不安なら2セット用意するのがおすすめ。
CBT(Computer Based Testing)はパソコンで受験する方式で、2023年から導入されています。出題内容・難易度は紙の試験と同じですが、試験日を柔軟に選べるのがメリット。受験料は300円高めの9,600円です。
学科+技能の両方に合格後、住んでいる都道府県の知事に免状交付申請を行います。申請手数料は5,300円。住民票・写真などの書類を揃え、合格通知書とともに郵送or窓口提出。約1〜2ヶ月で免状が届きます。
業界にもよりますが、ビルメン・電気工事の業界では「電工2種+未経験」で年収320〜400万円台のオファーは普通にあります。電工2種だけで戦うなら、求人サイトで「電気工事士・未経験歓迎」のキーワードで探すのが効率的です。
大いに役立ちます。製造業の保全エンジニア、建設業の現場監督、太陽光・EV業界など、電気を扱う仕事すべてで評価されます。さらに、DIYで家のメンテナンスを自分でできるという生活上のメリットもあります。
第二種電気工事士の過去問・教科書・解説は、姉妹サイト「ビルメンアカデミー」(bilumen.jp)で無料公開しています。
- 全14章の教科書(基礎理論〜法規)
- 過去問演習(年度別・分野別)
- 技能試験 候補問題13問の解説
- AI質問チャット(準備中)
元主任が監修した、現場の言葉で語る教科書です。試験合格までの「もう一冊」として、ぜひご活用ください。